17.老後のお金の不安;老後資金不足を補う資産 ~貯蓄、退職金~

老後の生活費を補うのは、貯蓄。言われている65歳時老後資金3500万円に対して、現在60歳以上世帯の貯蓄額は2500万円近く。平均値で見れば、貯蓄でかなり補えることになる。

一方、定年を迎える前の人にとって、最大の老後資金は退職金。大卒退職金は平均2374万円、約25年間で264万円減、さらに退職給付制度がある企業が減っている。給付も、退職一時金と退職年金の併用が増えてきている。退職金制度の動向に目を配り、制度変化への対応が必要になってきている。

生活を維持するために、年金不足を補う方法には何があるだろうか?

老後の主な収入源は年金、その年金がこれからどうなっていくのか、不安になる。

現在行われている年金財政検証の状況については、これまで紹介してきた(https://mfworks.info/2018/11/30/post-170/ https://mfworks.info/2018/12/20/post-593/ https://mfworks.info/2019/01/04/post-791/)。

老後のお金について、次回以降で自分なりに計算してみるが、これからは、年金だけで生活することは、今まで以上に難しいという当たり前の結論になってきそうだ。そうなると、不足するお金をどうするかということになる。

最初に考えるのは、貯蓄である。

「NIKKEISTYLE 会社員の老後資金、持ち家なら65歳で3500万円」という記事には、65歳でリタイアした時老後資金は3500万円で、大企業の会社員の退職金は平均2000万円強なので、平均的な生活なら退職金とは別に1500万円強の準備が必要と書かれている(https://style.nikkei.com/article/DGXMZO04993620Z10C16A7945M01)。

総務省「家計調査(二人以上の世帯)」(平成28年)では、年齢階級が高くなるほど、貯蓄額と持家率がおおむね増加するとなっている。

下表のように、世帯主の年齢が60歳以上の1世帯当たりの貯蓄額は、2500万円近い。

また、60歳以上の持ち家率は90%を超えている。

世帯主の年齢階級別1世帯当たりの貯蓄・負債現在高、持家率

年齢 貯蓄(万円) 負債(万円) 持ち家率(%)
60~69歳 2312 220 93.3
70歳以上 2446  90 94.8

資料:総務省「家計調査(二人以上の世帯)」(平成28年)

平成30年版高齢社会白書(http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2018/zenbun/30pdf_index.htmlによれば、世帯主の年齢が60歳以上の世帯の貯蓄現在高の中央値は1,567万円となっている。

一方、貯蓄現在高階級別の世帯分布をみると、世帯主の年齢が60歳以上の世帯(二人以上の世帯)の18.6%は、4,000万円以上の貯蓄を有する世帯である。

老後資金3500万円という日経スタイルの記事を信じれば、現在の60歳以上では、平均的に考えれば、老後の生活費の不足額のかなりは貯蓄でまかなえる可能性が高いと見える。

それも高齢の方が貯蓄額が多く、年金額も多いので(https://mfworks.info/2018/11/16/post-150/)、

高齢ほど生活費には困らないということになる。

ただし、貯蓄額の中央値と平均値との差は大きく、個人差がかなり大きいことから、平均値の議論はあまり意味がないと思われる。

一方、60歳より若い人たちの老後資金の目標は、持ち家、かつ貯蓄1500万円ということになる。

ここで注意しなければならないのは、日経の記事は、退職金2000万円を前提としていることである。

現在の退職金の相場は、どの位だろうか?

将来的にも退職金が出るのだろうかと心配になる。

「定年・退職のお金/退職金の相場 退職金はいくらもらえる?退職金の平均相場」という記事を見てみようhttps://allabout.co.jp/gm/gc/13774/)。

経団連が発表した「20169月度 退職金・年金に関する実態調査結果」によると、入社後標準的に昇進・昇格した者が60歳で定年退職した場合の退職金は、大卒2374.2 万円、高卒2047.7万円とのことである。

これは大企業の場合。中小企業(従業員10300人未満の都内の中小企業)の定年退職金は約1100万円で、ほぼ半分である。

この金額の退職金が今後も支払われるのだろうか?

結論から言えば、難しいと思われる。

ひとつは、退職金の減額傾向が続いていることがある。

大卒の場合、1992年の平均退職金は2637.9万円だったのが、2016年には、2374.2 万円と300万円ほど低下している。

さらに、退職給付制度がある企業が減っている。

2013年に発表された「平成25年就労条件総合調査結果の概況」(厚生労働省)によると、全企業に占める退職給付制度がある企業の割合は、1993年の92.0%をピークに低下し続けており、2013年には75.5%に減少しているとのことである。

もう一つは、退職金の支払方法が変わってきている。

2013年に発表された「平成25年就労条件総合調査結果の概況」(厚生労働省)によると、退職給付制度として、「退職一時金制度と退職年金制度を併用」が最も多くなっているとのことである。

20174月人事院民間の退職金及び企業年金の調査結果では、企業年金の制度があるのは全体のほぼ半分、平均退職給付額は2459.6万円だが、その内訳は、平均で、退職一時金1006.1万円、企業年金1453.5万円ということである

(誰も知らない24業種企業年金ランキング 「退職金+企業年金」どこが多いか 

https://president.jp/articles/-/2580)。

企業年金を頼りにすることができるだろうか?

「企業年金、3割が制度変更 人生100年時代に対応」という記事がある

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29311950S8A410C1MM8000/)。

退職金の制度変更は、「雇用年齢の延長と表裏一体の関係」にあるという。

ひとつは、「2013年の高年齢者雇用安定法の改正により65歳まで働く人が増えたためだ。企業は定年の引き上げなどで希望する従業員を雇う義務を負う」ことになる。そのため、退職年金の支給開始を遅くする動きがある。

もう一つは、「働き続けた場合でも、60歳を境に収入が大きく下がる人は多い。公的年金の支給開始年齢は原則65歳に引き上げられており、家計は厳しくなりやすい」ことから、60歳~65歳の期間の企業年金の支払方法の見直しの動きもある。

退職金をあてにできないとなると、H31年の財政年金検証にあるような、65歳を超えて働くことや、私的年金で不足分を補いという自己防衛手段を取らざるを得ないという結論になってしまう。

(14.老後資金計算の前提条件の確認;将来の年金制度(2)~支給開始年齢引上げ、パート等の加入、私的年金の推進~ https://mfworks.info/2019/01/04/post-791/

読んでいただきありがとうございます。

最後に1曲、Matt Cabの「家族になろうよ」

「100年経っても好きでいてね」で始まる、福山雅治が作った曲。

歌っているのは、米国出身で日本在住のシンガーソングライター、Matt Cab。

彼のTwitterのフォロワーは1万人を超える(https://twitter.com/mattcab)。

Matt Cab – 家族になろうよ

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