14.老後のお金の不安;将来の年金制度(2)~支給開始年齢引上げ~

老後のお金に大きく影響する年金財政の検証が進んでいる。

H31の年金財政検証の資料には、海外の年金受給開始年齢は、米国は現在66歳を67歳に、イギリスとドイツも現在の65歳前後から67歳に引き上げると書かれている。財務省の資料には68歳が例示されている。

また、年金受給開始年齢引上げに関連し、70歳までの就業機会確保や、繰下げ受給した場合と70歳まで働いて納付した場合での年金増額をPRする必要性の議論もされている。

年金支給開始年齢を引き上げる方策ばかりである。

前回(https://mfworks.info/2018/12/20/post-593/)に続いて、H31の年金財政検証の結果を推測する。

将来の年金の見通しは、5年ごとに「財政検証」を行って明らかにすることが法律で定められている。

厚生労働省のホームページには、社会保障審議会(年金部会)の6回の会議の議題と資料、議論の内容が掲載されているhttps://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-hosho_126721.html)。

議題は、以下のようである。

第1回 2018年4月4日(平成30年4月4日)

(1)  年金部会における議論の進め方について (2)これまでの制度改正のレビュー

第2回 2018年6月22日 (平成30年6月22日)

(1)平成28年度公的年金財政状況報告について(2)財政検証の意義・役割等について

第3回 2018年7月30日(平成30年7月30日)

(1)諸外国の年金制度の動向について

(2)年金額の改定ルールとマクロ経済スライドについて

第4回 2018年9月14日(平成30年9月14日)

(1)被用者保険の適用拡大について

(2)年金財政における経済前提に関する専門委員会について(中間報告)(3)その他

第5回(平成30年10月10日)

(1)雇用の変容と年金(主として高齢期の就労と年金に関して)

第6回(平成30年11月2日)

(1)  雇用の変容と年金(高齢期の長期化、就労の拡大・多様化と年金制度)

第3回からが、年金制度に関する議論になる。

このうち、第4回の「(2)年金財政における経済前提に関する専門委員会について」は、財政検証を行う上で前提となる適切な経済指標の数値についての議論である。

財政検証は、前提となる数値の置き方によって、当然、結論が変わってくる。

H26年の検証の時の所得代替率50%をかろうじて維持できるとしたケースEと、所得代替率42%のケースGとの経済指標の違いは以下のようである。

労働参加が進む、進まないという点で本質的に異なる部分があるとは言え、両ケースの差は

物価上昇率 0.3%、賃金上昇率0.3%、運用利回0.8%である。労働参加も設定の置き方によって、結論が変わりうる。

したがって、所得代替率50%が維持できるという結論が出せるような経済状況を前提条件として含ませることもできる。

また、第3回の「(2)年金額の改定ルールとマクロ経済スライドについて」は、経済指標によって変化するものである。

したがって、これらの2つの議題は「景気循環」によって影響を受けるもので、そもそも10年単位で経済予測することにあまり意味がないと思うので説明から省くことにする。

そうなると、議論のポイントは、第3回の「(1)諸外国の年金制度の動向について」と、第5回の「雇用の変容と年金」との2つに絞られる。そして、第6回の資料に2つのポイントがまとめられているhttps://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000405077.pdf)。

第3回社会保障審議会年金部会の資料「諸外国の年金制度の動向について」を見てみよう(https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000339624.pdf)。

「諸外国の年金制度の動向」として、OECDの報告書を引用して、先進諸国の年金制度に共通する課題として、「給付の十分性」と「制度の持続可能性」との矛盾がある。

このジレンマから抜け出す解決策として、3点、挙げられている。

1)就労期間の長期化;具体的には、支給開始年齢の引上げ(保険料拠出期間の延長)や早期退職インセンティブの廃止

2)公的年金の支給努力の対象を最も脆弱な人々におく;具体的には、 老後所得保障制度における再分配の実施

3)公的年金給付の削減を補完する私的年金等の奨励;具体的には、 若者や低所得者層に対する私的年金のカバー率の向上

1)の「就労期間の長期化」とは?

1)の「就労期間の長期化」は、

・生産年齢人口の急減の中でも、労働力の確保と生産性の向上により経済社会の活力を維持。

・高齢期の就労と年金制度における柔軟な対応を図ることにより、長期化する高齢期の経済基盤の確保を図る。

として、年金制度の対応の方向性のイメージは、

①年金制度の担い手としての被保険者範囲の拡大

女性や高齢者の就業率の向上の状況の中、年金制度の担い手になることにより、老後の所得保障を確保する仕組みの導入、短時間労働者の適用拡大

②年金受給開始年齢の柔軟化、在職老齢年金制度の見直し(下記に詳しく述べる)

③私的年金の充実

私的年金のカバー率の向上として、①確定給付企業年金、②企業型DC、③個人型DC(iDeCo)の利用

第6回の資料には、海外の年金受給開始年齢についての資料には、米国では現在の66歳を2027年までに67歳に引上げ、イギリスとドイツでも現在の65歳前後から10年間かけて67歳に引き上げると書かれている。

また、審議会の資料は、70歳までの就業機会確保と機会確保に伴い支給開始年齢の引上げを行うべきではないか、受給開始年齢を自分で選択できる範囲を拡大すべきではないかの意見が付記されている。

具体的には、受給開始年齢を60~70歳の間で自由に得られる制度、繰下げ受給した場合の年金支給額が増額されることや、年金受給しながら70歳まで就労して厚生年金に加入して保険料を納めた場合は、70歳時点での年金額が増額されることのPRの必要性が書かれている。

制度的には、受給開始年齢の引上げと短時間労働者の保険加入可能ということになるが、一方で、自助努力(私的年金)の推進が挙げられている。

こうした議論を読むと、年金制度の形は維持されるとしても、近い将来、生活するに十分な金額が支給されるとはとても思えなくなってくる。

読んでいただき、ありがとうございます。

最後に1曲、林芯儀 (Shennio Lin)”等一個人”

台湾の歌手(https://www.quick-china.com/music/album/shenniolin.html)、

FACEBOOKは16万人がフォローしている

https://www.facebook.com/ShennioLin/ https://www.instagram.com/shenniolin/?hl=ja)。

曲のタイトル、”等一個人”、は、映画「等一個人咖啡」の主題曲。

歌詞の和訳は、https://bitex-cn.com/?m=Material&a=songdetail&songid=4463

林芯儀 (Shennio Lin)”等一個人”

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