15.老後のお金の不安;最低でも介護費用500万円は見ておいた方がよい。

老後資金の計算で、「寿命」は前提条件になるが、「介護」は付加的に扱われている。しかし、寿命が尽きるまで「健康」でいられることは、稀なこと。

「健康寿命」は日常生活に制限のない期間の意味。平均寿命は男81年女性87年で、健康寿命は男72年女75年。その差(平均寿命-健康寿命)10年はなんらかの生活上の制限があることになる。この生活上の制限のある期間は、今後、短くなる可能性は低いと思われる。

75歳以上の1/3は介護保険を利用している。介護される可能性があるなら、自分の介護費用を準備しておいた方がよいことになる。

1カ月にかかる介護費用は平均約8万円、介護期間は平均約5年。介護費用と期間を掛けると500万円弱。自分の介護の備えは、今なら500万円を準備する。

以前に紹介した日経スタイルと週刊朝日の記事の計算では介護費用が考慮されている

https://mfworks.info/2018/10/25/post-139/)。

では、実際に、「介護」してもらう必要がある確率はどの程度だろうか?

最初に、「健康寿命」について取りあげる。

「健康寿命」は「日常生活に制限のない期間」という意味で、平成28(2016)年時点で男性72.14年、女性74.79年。ただし、2010年と比べて、男性1.72年、女性1.17年延びている(平成30年版高齢社会白書(全体版)(PDF版)」の「高齢化の暮らしの動向」の「健康・福祉」http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2018/zenbun/30pdf_index.html

平成29年簡易生命表による平均寿命は、男性81.09年、女性87.26年である。

そうすると、単純計算(平均寿命と健康寿命の差)では、男性8.95年、女性12.47年の間は、日常生活になんらかの制限がある期間ということになる。(平成29年簡易生命表の概況 平均余命 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life17/index.html)。

「平成30年版高齢社会白書(全体版)(PDF版)」の「高齢化の暮らしの動向」の「健康・福祉」(http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2018/zenbun/30pdf_index.html)には、65歳以上の者で介護保険制度における要介護又は要支援の認定を受けた人は、被保険者の17.9%を占めており、特に75歳以上で割合が高いと記載されている。

75歳以上の人で、介護保険制度の「要支援」の認定を受けた人は9.0%、「要介護」の認定を受けた人は23.5%、合計すると32.5%、と全体の約1/3になっている。

「要支援」は「家事や身支度等の日常生活に支援が必要になった状態」、「要介護」は「寝たきりや痴呆等で常時介護を必要とする状態」を指している(https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/kentou/15kourei/sankou3.html

したがって、75歳以上では、約1/3の人が介護保険制度を利用して何らかの支援を受けていることになる。

介護が必要になった主原因は、「認知症」が18.7%、次いで、「脳血管疾患(脳卒中)」15.1%、「高齢による衰弱」13.8%、「骨折・転倒」12.5%ということで、いずれも高年齢に特徴的な疾病で、本質的には「老化」が原因のように見える。

75歳はちょうど健康寿命を超える年齢であり、そうなると、介護は、誰にでも起こりうることと認識して、医療費とは別に介護費用を見込んでおく必要があると思われる。

補足だが、健康寿命が伸びているが、一方で平均寿命も伸びており、平均寿命から健康寿命を差し引いた期間、言ってみれば、”不健康期間”はほとんど変わっていない。

(平均寿命)ー(健康寿命)=(不健康期間)

したがって、健康寿命の伸びは、介護期間の短縮には結びつかない可能性が高い。

介護にかかる費用は?

1ヶ月にかかる介護費用は、要介護の状態、介護を受ける場所や住宅環境、家庭の事情などによってかなりバラつきがあり、平成27年度 生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」によると、平均額は7.9万円となっています

(介護費用の月額平均は約8万円!?平均総額はいくら?

https://www.hoken-buffet.jp/news/knowledge/longterm_avecarecosts/)。

介護費用月額の平均×介護期間の平均=総額として、見てみる。

介護期間で最も多いのは、4~10年未満で29.9%。次が10年以上で15.9%となっています。

そして平均は4年11ヶ月(59ヶ月)。

ニーズに応じたサービス内容の見直し(③安心して暮らすための環境の整備)(参考資料)

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000135323.pdf

社保審-介護給付費分科会第143回(H29.7.19) 参考資料2介護老人福祉施設(参考資料)

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000171814.pdf

介護費用の平均総額

「平均期間」と、「月額の平均額」を掛け算して、介護費用の平均総額を算出してみると

59.1ヶ月×7.9万円=466万8,900円

したがって、介護費用として、500万円は見込んでおきたいということになる。

ただし、施設入所となると、月7.9万円では不足する場合が多いと思われる。

そうなると、500万円は最低限のレベルということになる。

読んでいただき、ありがとうございます。

最後に1曲、曲婉婷 (Wanting Qu)の「我的歌声里」

曲婉婷は、中国ハルピン生まれ、カナダを拠点として活動している歌手(http://china8.blog82.fc2.com/blog-category-160.html)。

「我的歌声里」は、”私の歌声の中に”という意味、和訳したサイトがある

http://www.peoplechina.com.cn/home/second/2012-11/20/content_502314.htm)。

曲婉婷 (Wanting Qu)

– 我的歌声里 (You Exist In My Song)

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