21.老後のお金の不安 ~一人暮らしを想定して老後資金をシミュレーションしてみた~

前回(https://mfworks.info/2019/04/10/post-1038/)、年金減額と負担増加を考慮した老後資金のシミュレーションを行った。

このシミュレーションは現実に近いものとは思うが、明らかに非現実的な設定もある。
それは、夫婦2人は同年齢で、二人とも90歳まで生きるという設定である。
男女の寿命差があり、妻は最後の8年間は、一人暮らしとなることを覚悟しておいた方と
、以前に書いた(https://mfworks.info/2018/11/08/post-144/)。

今回は、さらに現実的なシミュレーションになるように、前回をベースにして、一人暮ら
しを考慮したシミュレーションを行った。

一人暮らしの設定条件

前回のシミュレーションでは、夫婦二人とも90歳まで生きるとしたが、以前調べた結果
では、将来の平均寿命(2065年)は、男85歳、女91歳と予想されている

https://mfworks.info/2018/11/02/post-141/)。
最新の統計(https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2018/html/gaiyou/s1_1.html)では、2016年の平均寿命は、男80.98年、女87.14年である。また、これまでの老後資金のシミュレーションは、2019年~2043年の間の計算をしてきたが、2040年の平均寿命予測は、男83.27歳、女89.63歳となっている。

そこで、今回のシミュレーションでは、上記の情報をもとに、夫(男)は82歳まで生き、一方、妻(女)は90歳まで生きると仮定した。

介護期間は5年間、夫の場合は78歳~82歳、妻の場合は86歳~90歳の間、介護が必要になるとした。

妻は、夫がなくなった後の83歳~90歳までの8年間は、自宅(持ち家)で一人暮らしをするという設定である。

一人暮らしの期間8年は、以前の想定した一人暮らし期間である(https://mfworks.info/2018/11/08/post-144/)。

一人暮らしになった時の収入と支出の設定

上記のように設定した世帯収入と支出について、前回の2人とも90歳まで生きる場合(ケース3)と、妻が83歳から一人暮らしとなる場合(ケース4)とについて比較してみる。

ケース3とケース4との大きな違いは、夫が亡くなった後、つまり、妻83歳以降である。

妻83歳以降の違いとしては、年金収入、所得税などの非消費支出、食料や水道光熱などの生活費が想定される。

まず、収入について考えてみる。

夫が亡くなれば、その分の年金収入はなくなるが、妻が夫の年金を遺族年金として受給するとした。

世帯収入は、夫の年金収入(厚生年金と基礎年金)と妻の年金収入(基礎年金のみ)と仮定している。82歳時で夫が年約161万円、妻が年約63万円の収入があるとする。

妻が遺族年金として受給できるのは、夫の厚生年金部分の3/4である。

夫の厚生年金部分を、年約1万円から基礎年金約63万円(妻と同じとして)を差し引いた約98万円とすると、その3/4、約74万円、を妻は受給することができる。

妻は、自分の年金収入約63万円とあわせて、年約136万円、年金受給すると設定した。

一方の支出について考える。

非消費支出は、少なくなると考え、シミュレーションでは、単純に1/2の金額にした。(遺族年金は所得税や住民税の課税対象とならず全額非課税となるようですので、実際にはもっと少なくなると思われる。)

消費支出のうち、住居は一人暮らしになっても変わらないが、食品、光熱水道、保健医療、交通通信など他の項目は、一人暮らしでは1/2になると想定した

上記の設定条件をケース3(2人暮らし)と比較する形で、下表にまとめた。

ケース3(2人暮らし)とケース4(1人暮らし有)の比較

ケース3 ケース4
90歳まで

2人暮らし

83歳から

妻1人暮らし

収入 年金

収入

毎年0.5%

減少

毎年0.5%減少

妻83歳以降、

夫の厚生年金の3/4

非消費

支出

75歳時

1割アップ

75歳時1割アップ

妻83歳以降、1/2

消費

支出

食品 妻83歳以降、1/2
住居 妻83歳以降も変わらず
光熱

水道

75歳時

2割アップ

75歳時2割アップ

妻83歳以降、1/2

保健

医療

75歳時

倍額

75歳時倍額

妻83歳以降、1/2

交通

通信

妻83歳以降、1/2
その他

項目

妻83歳以降、1/2
介護支出 75歳時

2割アップ

75歳時

2割アップ

また、介護を受けている期間は、前回と同様に、介護費用に食事費用の一部も含まれると考え、食品は一人当たり月額15000円減るとした。

計算に用いたエクセル表には、上記以外の支出として、住居修理、イベント費用、親関連費用・子供関連費用、葬儀費用および 相続税の項目を設けたが、個人差が大きいと考え、シミュレーションでは見込まないことにした。

一人暮らしを考慮したシミュレーション結果

上記設定条件で収入と支出をシミュレーションした結果を、ケース3(90歳まで二人暮らし)と比較したものが、下表である。(計算したエクセル表は大きすぎるので、省略した。)

なお、収入と支出の項目と、各項目の基礎数字は、前回のシミュレーションと同様に、統計資料をもとに設定したhttps://mfworks.info/2019/04/10/post-1038/)。

ケース3とケース4との収入と支出の比較(66歳~90歳、単位;万円)

 ケース3

90歳まで

2人暮らし

 ケース4

83歳から

妻1人暮らし

収入 夫年金収入 4,114 2,854
妻年金収入 1,603  2,180
非消費支出 税・社会保険料等 1,022 853
消費

支出

食料 1,872 1,545
住居 427 427
光熱・水道 719 597
家具・家事用品 290 245
被服・履物 208 176
保健医療 731 589
交通通信 742 626
教育 11 10
教養娯楽 701 590
その他支出 1,586 1,334
介護

支出

569 569
569 569
その他支出 住居修理等

妻の年金収入が増えるが、夫の年金収入を補うことはできない。

しかし、8年間の一人暮らしによって、非消費支出、消費支出とも、大きく減る。

上記各項目を集計してまとめたのが、下表である。

下表には、前回同様に、特別医療費として、別に250万円必要となる場合も想定した。

世帯収入は700万円近く減るが、一方で世帯支出は1300万円ほど減少する。

そのため、ケース4(妻1人暮らし有)では、ケース3(2人暮らし)と比較して、必要な老後資金は600万円程度少なくてよいという結果になった。

ケース3(2人暮らし)とケース4(1人暮らし有)必要な老後資金の比較(66歳~90歳、単位;万円)

  ケース3  ケース4
90歳まで

2人暮らし

83歳から

妻1人暮らし

収入 5,717 5,039
支出 9,448 8,128
収入-支出 -3,730 -3,095
収入-支出

医療(250万円)

-3,980 -3,345

将来変化と一人暮らしの両方を考慮すると、現在66歳の夫婦にとって、必要な老後資金は3000~3500万円程度となった。

シミュレーションの前提条件によって、当然、結果は変わってくる。

今回のシミュレーションは、一般的なエクセル表計算を使って計算しており、数字の入れ替えや条件設定は簡単に変更できる。老後が不安になった時は、現実を直視するためのツールとして、エクセル表計算は有効と思える。

自分の収入や生活費の実数字を入力すれば、さらに現実性の高いシミュレーションになるはずである。

最後に1曲、Reneé Dominiqueの”Close To You”

Reneé Dominiqueは、ウクレレ歌手でいろいろな楽曲をカバーしている(

https://ukuleleliberty.com/2017/12/03/reneedominique/)。

フェイスブックのフォロアーが3万人近く(https://www.facebook.com/reneedominiqueph/)、

インスタグラムのフォロワーは3.5万人ほど(https://www.instagram.com/heyimrenee/?hl=ja)。

”Close To You”は、もともと、1970年リリースのカーペンターズ(The Carpenters) の曲、曲名は”遥かなる影”と和訳されているようです(https://lyrics.red-goose.com/close-to-you-carpenters/)。

Close To You- The Carpenters (ukulele cover) | Reneé Dominique

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

error: Content is protected !!