”人は誰でも最後は一人” ~男性が”ひとり老後”になる確率~

新聞記事によれば、2018年の日本人の平均寿命は、男性81.25歳、女性87.32歳となっています。

男性の方が女性より寿命が短く、しかも、一般的には、結婚時の男性の年齢は、女性の年齢よりも高いことから、配偶者のある男性は、妻より先に亡くなる場合が多いと考えられます。

ということは、配偶者のある男性が“ひとり老後”の生活を送る確率は、女性と比べたら当然低いはずです。

今回は、男性が“ひとり老後”を送る可能性について、統計資料をもとに考えてみたいと思います。

なお、“ひとり老後”は、前回の女性の場合と同じく、主に、配偶者を失い、”独り身“になる意味で考えていきます。また、老後も65歳以上として考えていきますhttps://mfworks.info/2019/12/26/post-1605/)。

人口統計資料集2019年版 http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/Popular/Popular2019.asp?chap=0

日本の世帯数の将来推計 http://www.ipss.go.jp/pp-ajsetai/j/HPRJ2018/houkoku/hprj2018_houkoku_honbun.pdf

なお、根拠を明確にするためにデータ表を載せていますが、飛ばして読んでいただいて構いません。

男性が”ひとり老後”になる理由は、死別と未婚

50歳の男性の配偶者の有無についての統計資料は、以下のようになっています。

50歳では、約7割の男性は結婚、3割の男性は”配偶者無し”です。

男性50歳時の未婚割合,有配偶割合(2015年)

 未婚  配偶者あり  死別  離別
 23.37%  69.80%  0.57%  6.26%

では、年齢が上がると、どう変化するのでしょうか?

下の表のように、65~69歳では、50歳と配偶者ありの割合は変わりませんが、80歳以上でみても、大きな変化はないように見えます。

男性,配偶者の有無,家族形態別65歳以上人口(2017年)

年 齢  配偶者あり  配偶者なし
65~69  81.2%  18.8%
80歳以上  75.6%  24.4%

女性の場合には、80歳以上になると、配偶者ありと配偶者なしの割合が逆転しており、男性と大きく異なっています。

なお、男性の場合、年齢が高い方が“配偶者あり”の割合がむしろ高くなっているように見えます。これは、年代が下がるにつれて、未婚者の割合が高くなっていることを反映しているためと考えられます。

未婚については、このあとでもう少し詳しく見ていきます。

その前に、配偶者なしの理由としての“離別”(離婚)を見ていきます。

60歳以上の離婚率は、1%程度です。そして、再婚率も同じ程度で、離婚は“ひとり老後”となる主な理由はなっていません。

男性,年齢(5歳階級)別離婚率(2017年)

 年齢  割合
60~64 1.39%
65~69  0.87%
70歳以上  0.35%

性,年齢(5歳階級)別再婚率(2017年)

   年齢  割合
60~64 0.91%
65~69  0.53%
70歳以上  0.24%

一方、未婚率は、2015年の統計資料によれば、年齢が上がると低くなりますが、下の表のように、60~64歳で14.8%です。

上記した50歳時の配偶関係の表によると、未婚の割合は23.37%、4人に一人が未婚です。

未婚率は、年齢が若い方が高く、50歳をすぎて結婚するのは難しいと思われますが、そのためか、2040年には、未婚の高齢者の割合が大きく増加すると予測されています。

男性の未婚率の推移

  年齢 2015年 2040年
60~64歳 14.8% 23.2%
65~69歳 10.3% 21.2%
70~74歳 5.9% 18.7%
75~79歳 3.5% 14.3%
80~84歳 2.2% 10.7%
85歳以上 1.3% 6.3%

あとで示しますように。夫80~84歳の年代で妻と死別する割合は、現在15.8%ですが、2040年になると、80~84歳の未婚率は10.7%と予測されています。

2040年には、男性が“ひとり老後”の生活を送っている理由は、妻との死別と同じような確率で“未婚”になっていると思われます。

そうした変化に対応して、20年後の世の中の結婚や老後についての価値観は、様変わりしていくものと思われます。

夫が妻との死別で“ひとり老後”になる確率は低い

ここからは、夫が妻との“死別”によって“ひとり老後”になる確率について考えていきたいと思います。

男性女性の平均寿命の差、夫と妻の年令差を考えると、夫が“ひとり老後”の生活を送る確率は低いと思われますが、実際のところはどうでしょうか?

下の表は、有配偶者と死別の割合を50歳以降で年齢別に調べた結果です。

70歳前後から死別の割合が高くなり、高齢になればなるほど、死別の割合が高くなります。

しかし、それでも、女性の56%が夫との死別する80~84歳で男性は15.8%、女性の約8割が夫の死別を経験する85歳以上でも31%です。

女性と比較して、死別する確率は明らかに男性の方が低いのが分かります。

男性の平均寿命81.25歳を考慮すると、夫が妻と死別する確率は、妻が夫と死別する確率よりも低く、確率は10~15%位と考えることができそうです。

男性,年齢(5歳階級),配偶関係別割合(2015年)

年 齢 配偶者あり  (%) 死別 (%)
 50~54  71.7    0.7
 55~59  75.0    1.4
 60~64  77.1    2.5
 65~69  80.3    4.0
 70~74  83.2    6.5
 75~79  83.2 10.0
 80~84  79.8 15.8
85歳以上  66.5 31.0

(注)未婚と離婚のデータは省略しているので、合計しても100にはなりません。

そう考えると、夫は、妻より先に先立つ確率が高く、妻に先立たれること、つまり、夫が“ひとり老後”になる可能性については、平均的にはあまり考えておく必要がなさそうに思えてきます。

長生きした夫が妻の介護をする可能性を考えておく

そうはいっても、男性が“ひとり老後”を送らざるを得ない場合もないわけではありません。

夫が“ひとり老後”を考えておく必要がある場合として何が考えられるでしょうか?

単純に考えれば、妻より長生きする場合になります。

男性の平均寿命は81.25歳ですが、男性の26.5%は90歳まで生きています。

90歳は、ほぼ女性の平均寿命に相当する年齢です。

そうなると、男性が90歳を超えて長生きすると、“ひとり老後”の生活を送る可能性があると思われます。

長生きする夫の観点からは、“ひとり老後”に加え、もう一つ考えておきたいことがあります。

それは、“妻を介護する”可能性です。

女性の死因について調べた結果が下の表です。

老衰が死因の上位に入ってくるのは、80~84歳です。

女性年齢(5歳階級)別死因順位(2017年)

  年 齢   第1  第2   第3   第4   第5
7074 悪性新生物 心疾患 脳血管疾患 不慮の事故 肺炎
7579 悪性新生物 心疾患 脳血管疾患 肺炎 不慮の事故
8084 悪性新生物 心疾患 脳血管疾患 肺炎 老衰
8589 悪性新生物 心疾患 老衰 脳血管疾患 肺炎
9094 心疾患 老衰 悪性新生物 脳血管疾患 肺炎
9599 老衰 心疾患 肺炎 脳血管疾患 悪性新生物
100歳以上 老衰 心疾患 肺炎 脳血管疾患 悪性新生物

一方、男性の死因で老衰が上位に入ってくるのは、85~89歳と女性よりも年齢が高くなっています。

男性,年齢(5歳階級)別死因順位(2017年)

年 齢   第1位  第2位    第3位    第4位    第5位
70~74 悪性新生物 心疾患 脳血管疾患 肺炎 不慮の事故
75~79 悪性新生物 心疾患 脳血管疾患 肺炎 不慮の事故
80~84 悪性新生物 心疾患 肺炎 脳血管疾患 誤嚥性肺炎
85~89 悪性新生物 心疾患 肺炎 脳血管疾患 老衰
90~94 悪性新生物 心疾患 肺炎 老衰 脳血管疾患
95~99 老衰 心疾患 肺炎 悪性新生物 脳血管疾患
100歳以上 老衰 心疾患 肺炎 悪性新生物 誤嚥性肺炎

女性は長生きするが、80~84歳から徐々に老化、一方男性は平均寿命あたりから急激に衰えるといった解釈もできます。

『老いにみる男女の違い』(https://www.tyojyu.or.jp/net/topics/tokushu/Aging-and-Gender/oi-danjyochigai.html)には、女性の健康寿命について、以下のように書かれています。

2016年についてみると、平均寿命と健康寿命の差は、男性では8.84年であるのに対して、女性では12.35年。女性は、引き延ばされた人生の最終段階を要介護の状態で過ごす期間が長いということになる。

平均寿命を超えて長生きする夫には、“ひとり老後”の前に、“妻の介護”も含めた夫婦生活をどう過ごしていくかという課題に直面する可能性があります。

最後に1曲、福山雅治さんの”桜坂”

福山雅治 – 桜坂

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