11.老後のお金の不安;現在の世帯当たりの年金収入 ~手取り19万円~

老後資金計算する上で、老後にどの程度の収入が期待できるかの情報は必須。現在の高齢者世帯の年間所得は平均308.4万円、しかし、実収入で見ると、年金が主収入の無職高齢者世帯(夫65歳以上、妻60歳以上)では、平均月20万9198円(年間251万円)。

日経スタイルの記事の年金収入額22万円に対して、週刊朝日の記事では、高齢夫婦無職世帯の年金収入は「19万3051円」となっており、月3万円ほどの差がある(https://mfworks.info/2018/10/25/post-139/)。

厚生年金の場合、年金額は、加入期間だけでなく月額報酬額によって決まってくるので、個人差が大きく、平均値では実態とずれることがあってもおかしくない。

また、妻が厚生年金に加入していたかどうかによっても変わってくる。

個人で見た年金支給額は、前回調べた結果を紹介した(https://mfworks.info/2018/11/16/post-150/)。

世帯収入の観点から現在の年金額を調べてみた。

「平成30年版高齢社会白書(全体版)(PDF版)」(http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2018/zenbun/30pdf_index.html)に、(2)高齢者世帯の所得の記載があり、「その他の世帯平均と比べて低い」となっている。

具体的には、高齢者世帯(65歳以上の者のみで構成するか、又はこれに18歳未満の未婚の者が加わった世帯)の平成27年の年間所得の平均は、308.4万円だったとのことである。

ただし、所得の分布を見ると、年間所得150~200万未満が最も多く(全体の13.1%)、年間所得の中央値は244万円であり、平均値との差が64万円あり、かなり下回っている(【基本】データの中央値 https://math.nakaken88.com/textbook/basic-median/)。

また、公的年金等(公的年金・恩給)を受給している高齢者世帯において、公的年金・恩給の総所得に占める割合が100%の世帯が約5割強、80%以上の世帯も含めると約2/3の世帯が公的年金等で生活しているということである。

「平成29年 国民生活基礎調査の概況」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa17/)でも世帯当たりの年金収入を見てみよう。

平成28年の高齢者世帯の平均所得金額は、318.6万円(月額約26.6万円)、このうち、公的年金等の金額は211.2万円(月額約17.6万円)で、全体の66.3%を占めている。

公的年金等を受給している高齢者世帯のなかで、公的年金等の総所得に占める割合が100%の世帯は52.2%で、占める割合が80~100%未満を加えると、65.8%の世帯で年金が主収入になっている。「平成30年版高齢社会白書(全体版)」と同様である。

もう一つ、別の資料を見てみよう

(「家計調査報告(家計収支編)―平成29年(2017年)平均速報結果の概要―」 http://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/nen/index.html)。

高齢無職世帯のうち高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)についてみると、実収入は20万9198円、このうち、社会保障給付が19万1880円(収入全体の91.7%)である。

日経スタイルと週刊朝日の年金収入の金額差は、名目収入か実収入かの違いのようであるが、一人当たりで見ても世帯当たりで見ても、平均値と、最頻値や中央値との間では、かなり差がある。

90歳まで生きるのが特別な時代ではないので、老後資金計算は長期間の計算になる。

平均値ではなく、各個人ごとの予測値に基づいて計算しないと、実際とかなりかけ離れた数字になってしまうリスクがある。

さらに、予測値を出すために、自分の年金額を推定計算することはもちろん必要だが、国の年金制度が今後どの程度維持されていくのかを考慮したくなる。

年金制度の将来については、法律の規定により、厚生労働省が少なくとも5年ごとに「将来の公的年金の財政見通し(財政検証)」を行うことになっている。

最近では平成26年に行われ、(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/zaisei-kensyo/index.html)、日経スタイルの記事では1割減と見ているが、検証でのシミュレーションに基づいた「所得代替率」の低下を考慮して設定したようであるhttps://www.mhlw.go.jp/nenkinkenshou/verification/index.html)。ただし、現行制度が維持されるという前提である。

次回は、平成26年の「財政検証」の結果を取り上げる。

読んでいただき、ありがとうございます。

最後に1曲、蔡淳佳(Joi Chua)の「涙そうそう」(中国語版)

蔡淳佳は、シンガポール(新嘉坡)の歌手(https://www.facebook.com/joichuaofficial/)。

「泪光閃閃」は、”涙の光きらきら”の意味。

「涙そうそう」(泪光閃閃)蔡淳佳

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