7.老後のお金の不安 ~巷の3500万円の根拠~ 老後資金の計算方法は?

一般的な老後資金を計算する時の前提は、期間は65~95歳の30年間、夫婦2人。収入は年金月20万円、支出は月28万円。別に介護等の支出が30年間で600万円。(老後資金の必要額)=(30年間支出総額)ー(30年間収入総額)。こんな簡単なシミュレーションをもとに準備して、本当に大丈夫なのか心配になる。

老後の生活にどれくらいの人が不安を感じているのだろうか?

9割近くの人が老後生活に対して不安を感じており、その内容を見ると、「公的年金だけでは不十分」が最も高いという調査結果がある(公益財団法人生命保険文化センターが行った意識調査 http://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/oldage/5.html)。

『定年後-50歳からの生き方、終わり方』の著者楠木新さんは、お金の使い方や価値は個人によって異なるのであり、不安を解消する鍵は「身の丈サイズの老後認識」にあると言っている(https://xn--q9jb1h158kjed424b9nkvm1byl3b.jp/archives/10375)。

そのために、自身の定年後マネーを「見える化」する上で、フィナンシャル・プランナーの時に出てきたような、将来のお金の出入りを想定して、キャッシュフロー表を作成することを勧めている。

金融機関などに相談に行くと作成してくれるが、これは一般論や平均値なので、自分で作成して、今、自分がどういうお金の使い方をしているか理解すれば、ある程度先が見えてくるという。

確かに、お金の使い方や価値は個人によって異なる。

とはいえ、一般的には老後資金として、3000万円とか、3500万円という金額を目にすると、実際のところはどうなのか、どういう計算が根拠になっているのか知りたくなる。

今回は、雑誌の記事2つを見てみる。

ケース1として、日経スタイル(NIKKEI STYLE)の記事を見てみよう

https://style.nikkei.com/article/DGXMZO04993620Z10C16A7945M01)。

本文には、「自分の収入や支出に合わせて修正しながら、老後資金の準備を早めに始めよう。」とはなっているが、見出しは『会社員の老後資金、持ち家なら65歳で3500万円』

3500万円と算出された老後資金の計算の前提条件を書き出してみよう。

65歳でリタイアし、95歳までの30年間、夫婦2人暮らしを想定した老後資金である。

(国立社会保障・人口問題研究所の予測では2050年時点での寿命を男性は93歳、女性は98歳としているのをもとに95歳に設定している)。

収入は、会社員(厚生年金と基礎年金)と専業主婦(基礎年金のみ)で、厚生労働省が想定するモデル世帯では月22万円だが、1割減として計算(19.8万円)、30年間で合計7128万円。

1割減としたのは、「厚労省の財政検証では財政検証では実額は必ずしも減らないとみるが、厳しめに所得代替率の減少と同じ1割減として計算」と注釈がつけられている。

一方、支出は平均的な家庭で1カ月約28万円(総務省の家計調査での高齢夫婦無職世帯の金額)で、30年間で合計1億80万円。

これに、予備費(介護やリフォーム費用など)として600万円を見て、合計すると1億680万円。

そうすると、収支計算すると、平均的な生活には3552万円足りないという計算結果になる(1億680万円ー7128万円=3552万円)。

ケース2として、週刊朝日の記事、『老後のお金はいくら必要? 「90歳超の人生」に備えよ』を見てみよう

(週刊朝日 2017年12月1日号 https://dot.asahi.com/wa/2017112200005.html

65歳から、90歳あるいは95歳までの間の夫婦二人の家庭の老後資金の計算結果である。

収入は、総務省「家計調査年報」2016年から、高齢夫婦無職世帯の収入は「21万2835円」、収入のうち年金は「19万3051円」。

収入から、税金と社会保険料が引かれて、可処分所得は「18万2980円」。

一方、支出は、消費支出が「23万7691円」。

消費支出と可処分所得との差額、「5万4711円」を月々の貯蓄取り崩し額とすると、年間の取り崩し額は「5万4711円×12=65万6532円」になる。

90歳までの25年間だと「約1640万円」、95歳までの30年間だと「約1970万円」の老後資金が必要になる計算結果(https://dot.asahi.com/print_image/index.html?photo=2017112200005_3)。

これに加えて、医療費200~300万円と介護費用1100万円(一人分550万円)の合計1500万円を準備しておいた方がよいという。

上記の生活費としての毎月の取り崩し額と医療費・介護費用とを合計すると、90歳までで約3000万円(1640万円+1100万円)、95歳までで約3500万円(1970万円+1100万円)の老後資金が必要となり、ケース1の日経スタイルの計算(95歳)と同じ金額になる。

日経スタイルと週刊朝日の老後資金を計算するにあたっての前提条件はほぼ同じである。

老後期間;65歳~95歳の30年間、夫婦2人世帯で生活。

収入;年金収入が主で、生存期間中、月約20万円。

支出;現在の平均的な家庭の額をベースにしており、

日経スタイルでは、生活費月28万円(医療費含む)+介護等費用600万円

週刊朝日では、消費支出月24万円+医療費300万円+介護費用1100万円+予備費100万円

老後資金の計算;30年間の収入総額から30年間の支出総額を差し引いた金額をもって、老後に必要な資金としている。

なお、上記計算では、要介護状態になって施設入居が必要になった場合の費用は含まれていないが、日経スタイルでは介護施設に入居する場合には、介護付き有料老人ホームの費用として、「入居一時金と、平均で5年程度の費用を合わせると2000万円程度必要なケースも多い」と書かれている。

計算の前提条件が変われば、当然のこと計算結果も変わってくるし、それ以前に単純な算数の計算でよいのかという不安はある。そこで、次回から、これらの計算の前提となっている各数字の根拠を確認していきたい。

読んでいただきありがとうございます。

最後に、台湾の女性歌手、張韶涵 (Angela Zhang)の”隱形的翅膀”

”隱形的翅膀”は、「見えない翼(羽)」の意味(https://ami2026.exblog.jp/8945685/)。

張韶涵 隱形的翅膀

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